モリブリンを探しに、森に入った。
その名の通り、モリブリンとは森に住むモンスターである。
薄暗い森の中を、投槍片手に我が物顔で徘徊している。身の丈は、人ほどもある。

リンクは森の中をくまなく探し回ったが、ワンワンを攫っていったモリブリンは見つからなかった。
洞穴で手に入れたあの羽根、『ロック鳥の羽根』のおかげで、穴ぼこだらけで通れなかった道を進む事が出来た。
そしてしばらく歩くと、村とは逆の方向に、迷いの森を抜けた。やはり、モリブリンは見当たらない。
---もう、森は探しきったはずだけど…一体、モリブリン達はどこに…


森を抜けた先は、潮風の吹く丘だった。砂浜こそ無いが、打ち寄せる波の音が聞こえてくる。
そこから東へ行ったところに、沼を見つけた。位置的に、あの洞穴の北…恐らくここが『ゴポンガの沼』なのだろう。
沼には長いつるを持った水草が、迷路のように生えており、異様に大きい花もところどころに咲いている。
確かに「花咲く沼」だが、その花とつるが邪魔で、奥に進む事は出来なかった。
しかしどのみち、今はワンワンを探している途中。沼は後にする事にした。

沼地への道の途中に、電話ボックスを見つけた。あのうるりら爺さんと話が出来るようだ。
「困ったらわしにおまかせ」と言っていたが、本当に答えてくれるのだろうか…

「ハロー!うるりら爺さんじゃ。」
「もしもし、リンクです。マダムニャンニャンさんのワンワンが、モリブリン達に攫われたみたいなんですが、
森のどこを探しても、それらしいモリブリンは見当たらないんです。心当たりはありますか?」
「ふむ…モリブリンのほとんどが森に住んでるんじゃが、たまにタルタル高地の洞窟にもおる…
何かの役に立つかな?うるりらー!」

電話が切れた。
タルタル高地…地図によると、沼のさらに東に位置する高地の事のようだ。
しかし沼に立ち入れない以上、こちら側から向かう事は出来ない。
森を東に抜け、その高地への道を探す事にしかない。


森を出、穴を飛び越え北へと向かう。
大きな岩が、二股の道の一方を塞いでいる。その隙間から、沼が見えた。
地図で確認する。どうやら、この辺りがタルタル高地のようだ。

しばらく行くと、洞窟の入り口を見つけた。しかし、そのすぐ近くに梟の形をした像があった。
調べてみると、何やら像から声がする。

「『風の魚』は魚にあらず 風を呼ぶが、鳥にもあらず」

…要は、魚でも鳥でもないという事だろうか?
とにかく、今はワンワンを助け出すことが先決だ。


洞窟に入る。

「ヌッ、何奴!怪しい小僧だ!」

盾と剣を構えたモリブリンが、鋭い目つきでこちらを睨んだ。
どうやら、ここがうるりら爺さんの言っていた洞窟らしい。

「皆の者、出あえっ!出あえー!!」

そう言うと、モリブリンはいきり立ってこちらへ向かってきた。
盾を構え、敵の攻撃を受ける。剣捌きはかなりのもので、つけいる隙が無い。
こちらからも切り込んでみるものの、ことごとく盾で弾かれてしまう。
---それなら…これでどうだ!
リンクはロック鳥の羽根を手に、モリブリンを高々と飛び越した。
そして呆気に取られ、隙だらけになっているその背中に、剣を振るった。
見張り役と思われるそのモリブリンは、声もあげずに倒れた。

奥へ入ると、一斉に4体のモリブリンが襲い掛かってきた。
投槍を跳躍でかわし、腕に力を込める。モリブリン達は、じわじわと間合いを詰めてくる。
そのどれもが十分に間合いに入ったのを見て、リンクは回転斬りを放った。
「せやぁぁぁ!!」
渾身の斬撃を、取り囲む魔物に対し全身を使って叩き込む。一瞬にして、4体のモリブリンはなぎ倒された。

さらに奥へと進む。
すると、今までのモリブリンの4倍はあろうかという、巨大なモンスターが現れた。

「ええい、ワンワンを狙って来たか!」
「ワンワン?やっぱりお前らが攫って行ったのか!」
「…さてはお主、ワンワンの主マダムニャンニャンの放った刺客であろう。」
「そんな事より、おとなしくワンワンを返せ!」
「ふん!返り討ちじゃ!」

槍を投げつけてきた。それも、今までのモリブリンとは訳が違うスピードだ。
下手に避けようとしても、相手は小刻みに動いて、しっかりとこちらを狙ってくる。
なんとか盾で防いではいるが、完全に防戦一方だ。
突然、槍の攻撃が止まった。かと思うと、巨体が一気に間合いを詰め、体当たりをしてきた。
これも盾でかわすが、手が痺れそうな衝撃だ。反撃に何度か切り込んでみたが、全く効果が無い。

---何とかして、隙を作らないと…!
リンクは考えた末、壁際に立った。槍を盾で防ぎ、相手の体当たりを待つ。
巨体が迫る。そして、当たる寸前で身をかわす。かわしながら、横目で敵を見る。
すると敵は、リンクの思惑通り壁に頭を強打し、だらしなく床に倒れている。
隙だらけの相手に容赦なく斬撃をあたえると、再び敵は身を翻し、攻撃を始めた。

また壁際に構える。体当たりをかわす。そして隙が出来たところを、斬る。
その繰り返しで、遂に敵は倒れた。同時に、奥へと続く扉が開かれた。

ワンワンが、岩に繋がれていた。
これでやっと、ワンワンを救出できた。近くで見ると、やっぱり怖いが。


村へ帰る途中、ワンワンの鎖を持って歩いているのだが、
せわしなく動いて落ち着きが無い。無表情で歯をカチカチいわせながら、しきりに跳ねている。

そして突然、猛スピードで何かに突進したかと思うと、なんとモンスターを一飲みにしていた。
森に棲んでいるモリブリン達でさえ、あっさりと食べられている。
何故リンクが食べられないのか不思議なくらい、食欲旺盛である。
--- こんなにバクバクと…もしかしたら、あの沼の花も何とかなるかもしれない…


村に着いた。
マダムニャンニャンの家に行き、無事にワンワンを救出した事を伝えた。

「ワンワンを取り返してきました。特に怪我もしてないみたいです。」
「まぁ、よーくウチのワンワンを連れて来て下さったざます!うれしいわ!」
「それと…少しの間、ワンワンを貸して貰ってもいいですか?ある所に連れて行きたくて…」
「あーら!ついでにお散歩までして頂けるんざますか…助かるざますわぁ。それじゃ、お願いするざますっ!」


再びワンワンを連れ、『ゴポンガの沼』へと向かう。
--- 今度こそ、何か分かるといいけど…
そんな不安をよそに、ワンワンは元気よく跳ね、そしてモンスター達を食べていった。









 

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